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ここはジュノ下層。




この街には冒険者と呼ばれる者達以外にも、昔からのジュノの住民。
各国家からの移住者、そして戦火で国を無くした難民が集ってもいる。

最上層は大公のおわす庭。一般人は住めない。

上層は昔からの住人のお屋敷が建ち並ぶ。
ジュノ唯一の総合病院や礼拝堂もこの層にある。

港は商業区として栄え、飛空挺が行き来する。

そして下層は、難民や後ろ暗い商人、冒険者達が行き来する、
いい言葉を使えば「活気のある層」。
悪く言えば「スラム」だった。


そこを毎日ふらふらとうろつく1匹の子ミスラ。
特に商才があるわけでもない。
自分という花を売るわけでもない。
道に落ちている物を拾ったり、バザーをしているが売れない商品を
お情けで恵んで貰ったり…まぁ、そういう事で生計を立てていた。

「今日はあんまりお金もごはんももらえなかったにゃ…。
 でもおうちには病気のママニャが。。今日こそなにか
 良い物食べてもらわないと。。ホントに。。弱ってる。。みぅ」

子ミスラは自分の懐を確かめる。
全財産で450ギル。
この1週間で貯まったものである。
これをゆっくりと切り崩せば母子で数日は凌げる。。

でも、栄養のあるもの…お医者様には見てもらえるだけのお金がないから、
せめてママニャに栄養のあるものを…。

子ミスラは思い悩んだ挙げ句、ソロムグの崖から飛び降りる思いで、
ミスラ風海の幸串焼きを1本買った。
「これ食べたら…ママニャ元気になってくれるかにゃ…。。
 早く暖かいうちに持って帰るにゃっ」



路地裏の日も差し込まない、最低ランクの貸間。
ジュノに着いてから、弱い体を無理に鞭打ってママニャは
自分と子ミスラを養うために働いた。
人には言えない事も何度かした事もある。
でも、それを誰が責められるだろう?
貧しいから、しかたがない。

貧しさは人から矜持を奪い取るのだ。



粗末なドアを開けて駆けこむ子ミスラ。
「ママニャっこれ。これ食べてっ」
「え…ミスラちゃん、、どうしたの?こんな高い物」
「今日はとっても儲かったのにゃ!だから、ママニャこれ食べて!
 そしてまた元気になってほしいのにゃ。。」
「ミスラちゃん… ありがとうね」

ママニャは娘の心遣いに涙が出そうになるのをこらえ、
笑顔で微笑んだ。
「せっかくだから2人で半分こしましょう?ね?」
「だめ!ママニャ、元気になってほしいにゃ。。だからちゃんと食べて。お願いっ」
「ミスラちゃん…」







その時、男の声が響く。
『その海串は出来損ないだ。食えないよ。』
「だ、、、誰っ!?」


『俺の名前は山岡屍蝋。ちょっと前を通りかかった暗黒騎士だ。
 それにしてもひどい海串だな…。
 よく見て見ろ。材料は中華産さ』
「あっ!」
『おまけに香味も飛んでいる。 とても海串とは呼べたもんじゃないね。
 そんな物を食ったら、余計体がダメになるぜ』

「そんな…そんな…一生懸命、、持ってるお金全部で買ったのに…
 ひどい。ひどいにゃ。。。」
「あなた、突然家に入り込んでそんな酷い事を。。
 私は娘のいたわりだけで十分だったのに!」


『おいおい本当の事を言ったら邪魔者呼ばわりか?
 一週間待ってくれ。俺が本当の海串を食わせてやる。無論HQ3だ』








↓美食という業を背負った暗黒騎士、山岡の暴挙。しかしそれを遮る者が!






『うわっはっはっはっはっはっはっ! 
 屍蝋、だから貴様は食のなんたるかを知らんと言うのだ!」
『お前は…食の竜騎士、海原竜山!』
『そこのお2方。この青二才の口車に乗ってはいかん。
 こいつは全く何も判ってはおらん…!』
『おい!何を言い出すんだ!あんただって一目見れば判るだろう?
 あの海串は最低の出来だ!あんなもの料理と呼ぶのもおこがましい!』


『屍蝋。。救えぬ男よなぁ。
 良いか。お前が言葉を発する前、あの2人は幸せそうだったか。
 それとも不幸せそうだったか?』
『ぐ・・そ、それがどうした!?料理の出来には関係ないだろう?』
『だから貴様は青いと言うのだ。
 あの母ミスラは、子ミスラが自分を労ってくれた事。
 そして無理をして、自分の好きな食べ物を買ってきてくれた事。
 それだけで満たされていたのだ。
 だが!貴様の無駄なうんちくでそれは台無しになった!
 
 料理とは笑顔で食べるものだ。たとえ最高の材料と最高の腕で
 調理したものでも、口にする者を喜ばせない物は美食ではない!』

『ぐ…ッ!!』
『この青二才が迷惑をおかけした。
 ここにタブナジア風海の幸シチューがある。
 これを2人で鍋をつつきながら召し上がって頂きたい。
 帰るぞ、屍蝋。貴様との勝負の場はここではない』

『く、またも…またも竜山に勝てなかった…。
 いや、己の慢心に負けた…』












「「いいから早く帰れニャ」」
美味
上層酒場 / 2008/12/22 01:06
コメント⇒7 / トラックバック⇒0

コメント

笑いましたw
colmさんが子ミスラの台詞をぽちぽち打ちこんでいる所を、ぜひ見てみたいデスっ!
久々のお話し、楽しかった♪
次も気長に待ってまーす♪にぅにぅw

いいお話しだにゃーと思って最初読んでましたが・・・。
うん。途中からはお約束通りというか、笑わせてもらいましたw
予想の斜め上を行くストーリーって楽しいですね〜w

>人には言えない事も何度かした事もある。
でも、それを誰が責められるだろう?
これ、続き物ですよね?ですよね? 妙にここばかり気になる私。

チクショー

どういうことだねColm君、説明してくれたまえ!

全モンクが泣いた
ちょっとモンク仲間に呼び掛けて部屋でためるしまくって
モンク暖房してくる!!これであの親子も寒くないぜ!

絵が追加されてた・・・

いいから早く帰れニャ!

> にゃんこさん

15分で書いたのでなんというかアラが目立ちます。
今思えばもっとこう、こう、こうすればよかった、
という所もありますがまあ一発ネタなので次回作にご期待を。



> みゅーる

次は予想の斜め下をいく超鬱な連作になる予定。
笑いどころは…多分ナイ。



> 予備軍さん。

目の付け所が違いますね(汗
まあ、ママニャは重度の栄養失調と第一期梅毒、
とだけ申し上げてあとは脳内補完よろしくお願いします。



> 8詩

なんでおれが畜生なんだよこのド畜生!111



> くろっく

部屋中に集まるモンク達。
善意の「ためる」善意の「かまえる」
そして子ミスラは心に深いトラウマを負うのであった。。

ビバ肉体。



> ちぇしゃさん

ネタ画像フォルダから発掘して、
ついでだから追加しときましたwwww

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